夜な夜なワイン ~ときどきジャズ~
丸の内「エスカール アビタ」 オーナー・ソムリエの徒然
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コルクでなければダメ!ですか?


ワインボトルの栓。といえばコルクが当たり前でしたが、
最近は、スクリューキャップやプラスティック製のものが多くなってきました。
理由のひとつは原木、コルク樫の不足。
良質のコルクの価格は高騰。きびしい状態だとか。
コルクのふるさと(生産地)の約半分は、ポルトガル。
樹齢が25年以上の木から、切り倒してしまうのではなく
ぐるりと皮をはがすように切り出します。
次にコルクを採取できるのは、10年ほど休ませてからということ。
非常に長い年月がかかるのですね。
各国へ輸出されるようになった近年では、不足してしまうのは当然といえば当然。
もうひとつの理由として考えられるのは、
「コルク臭(ブショネ」)」と呼ばれる、トリクロロアニソールの問題。
ソムリエが抜栓後に、お犬様よろしく「クンクン」と・・
やっているのは、この臭いがないかの確認。
これは、コルクの漂白殺菌に用いられる塩素が残留している場合に,
ワイン中のフェノールとカビの作用によってつくられてしまう憎むべき香りです。
何日置いても何をしても抜けないいやらしい香りです。
香りはもとより、ワインの果実味はなくなり、本来のワインとはかけ離れた液体へと・・・
なお、汚染されているのは、実に全ワインの5%とも6%とも言われています。
(私の経験上も数%は下らないと思います)
「本物のコルクでなければ。」という方も沢山おられるのは承知の上。
ボルドーのプルミエクリュやドメーヌロマネコンティはともかく、
普段私たちの口に入るワインは、セラーで長年熟成させるものではありません。
せっかく造り手さんが、一生懸命に造ったワイン。
5%もダメにするのはどうでしょうか?
全てのワインを、美味しく楽しく飲んであげたいと思うのは、私だけではないでしょう?
美味しいよと勧められ、せっかく買ってきた1本。
開けたら・・・ゲッ!! ぶ・・ブショネ!。
家には、変わりは無いし・・悲しみの涙に暮れてしまいます。
スクリューならアウトドア(キャンプやハイキング)にも、オープナー不要。
残っても、蓋をするのが簡単。こぼれません。
“ラギォール”?“ライヨール”?ソムリエナイフ考


写真 左上が Chateau Laguiole シャトー・ラギオール
右下が laguiole en Aubrac ライヨール・アン・オブラック
ソムリエはもちろん、ワイン愛好家の多くの方が愛用するソムリエナイフの、
代表機種ともいえる「ラギオール」と「ライヨール」ですが、
どちらが正しい発音なのでしょうか。
フランス北部では、「ラギオール」。南部では「ライヨール」と発音するとか・・・
今は沖縄に移住してしまった、ライヨール村出身のソムリエは「ライヨール」
と発音していたような気がしています。
「ラギ・・」を作っているのは、1850年創業のスキップ社。
古く14世紀から始まり、18~19世紀には刃物文化の中心地として
栄えた「ティエール」にあります。
一方「ライ・・」は牧畜、農業を中心としたライヨール村。
1829年に始まったといわれている現在の形の折り畳み式ポケットタイプの
ライヨールナイフは、ライヨール村が起源とされています。
どちらも、パリの南方。フランスの中心部、オーベルニュ山地に位置しています。
これまたどちらにも軍配は挙がらず。
現在の「ラギ」はスキップ社の当主、サナジェストが1993年、古い歴史と名誉をかけて
名ソムリエと謳われるヴィアリスとの合作として世に送り出した究極のソムリエナイフ。
「ライ」は、1987 年にライヨール社が設立された後、世界的なデザイナー
フィリップ・スタルクが、ライヨールナイフを原型に1995年にデザインしたものだそうです。
これも同じような変遷。
全体のフォルムも似てるし、
なんか、どちらでもよくなってきますね。
「本家~」紛争は所詮水掛け論ですね。
慣れれば、どちらも使いやすい逸品です。
因みに当店のスタッフでは、私のみ「ライ」。他は「ラギ」を使用しています。
さてもうひとつ、ナイフの背面にいるこれ


私はずうっと「ハエ」だと思っていました。
確かスペインの工芸品には「ハエ」のマークががあったように記憶しています。
注)英語で言うところの“spain fly”ではありません。スペインのハエは、
ツチハンミョウ(甲虫)です。媚薬です。知ってらっしゃる方はそうとうに・・・・
ライヨール村は、冬は寒く農閑期ですので、スペインに出稼ぎに行っていたから・・・・
と勝手に思っていました。
「ミツバチ」が正しいそうですが、
「イメージの問題で、ほんとは「ハエ」なんじゃねーの?ハエだよハエ!」
・・・とかんぐり深い私です。失礼しました。
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